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群れ遊びについて考える (2011年)

はじめに

  今から20年前に文部科学省の前身である文部省が全国的に行った子どもの「健康調査」によると、小学生の体育や部活を含めた一週間の運動時間は、男児14時間31分、女児11時間39分で、子ども達に必要な大筋活動の3分の1も満たしていませんでした。就寝時間の遅れ、睡眠不足、偏食、なども指摘され、将来の生活習慣病への罹患が危惧されていました。昼間の運動が不足することによりアトピー、喘息、風邪、けが、いじめ、ヒステリーなどの問題行動が指摘されたのです。「三つ子の魂百まで」と言いますが、4歳後半からの身体は一生を左右します。小学校からでは遅いのです。 

原田先生とカオル幼稚園の出会い

  平成7年に初めて原田碩三先生に来園して頂きました。兵庫教育大学名誉教授であった原田先生は知・徳・体とも健全な園児が育つ保育を実践するために「群れ遊び」保育を研究しておりました。

  群れ遊びの開発者である原田先生は小児保健の研究者として42年前から年間数百人の子どもの足を記録し続けていました。「足指は軽視されがち。でも片方の小指を痛めただけでも歩きにくい経験をしたことのある人は多いでしょう。足指は体全体と密接につながり、それを鍛えることが重要です。」「歩行量が減少したこともあってか、近年は子どもの足の発達にひずみが生じ、小学生でも外反母趾になったり、脊椎がゆがむケースも目立つという。幼児期から足全体を使い、しっかり歩かせることが重要。」と子どもの精神的身体的発達についてのお話はつきるところを知りませんでした。

群れ遊びと100分遊び

  今の社会問題には自立できないために起こる問題が多いように思われます。自分で気が付いて考え行動できる子を育てることが自立した子を育てるという意味であり、そのためにカオル幼稚園では「群れ遊び」保育を最適な方法と考え実践しています。幼児期は、人間としての体の構造がおよそでき、一生につながる体の機能が開発・促進される時で一日に5~6時間の活発な運動が必要とされています。そのうえ、幼児期は発汗や血液の流れなどを自律的に調節して、われわれの健康を守る自律神経の完成の直前ですから、運動による刺激は重要な意味を持っています。運動によって自律神経のうちの交感神経の働きを高めると、拮抗作用によって健康の基盤である、消化、吸収、睡眠、排便などを司る副交感神経の働きが促進されます。つまり、快動は快食・快眠・快便を保障し、かつ、ストレスを発散させ、心を落ちつかせます。判断力、正確さ、集中力、持続力なども群れ遊びの熱中活動の中で助長されます。

群れ遊びとリーダー

  最近は自分の頭で考え積極的に行動する自主性や、集団の中で自分の要求を生き生き出せる主体性が育っていないので、リーダーになれそうな子が非常に少なくなりました。つまりわがまま勝手、反社会的、自己主張するだけ、思いやりがないなどの子が増加しています。こんな子はいくら技術や体力が優れていてもリーダーにはなれません。また、保育者が、あの子は自己主張が強すぎる、自己中心的だなどと考えて対応すると、リーダー候補はいなくなります。遊びの群れが5人以上になり、競争と共同が同居した役割遊びに発展するためには、リーダーの存在は欠かせません。だから、私どもとしてはリーダーが育たない時は園児との信頼関係が薄いのだと反省します。そして、先入観をもたないで、偽りのない心で子どもと接し、その子の長所を生かすことを大切にします。それは、できたら分かる、やれたら自立・自律ができるからです。後片付けなども、使ったものは自分で片付けなさい、などといいません。その代わりに片づけをした子にはタイミングよく、表情、身振り、言葉などで感謝します。このように指図・命令・禁止・二者択一の言葉がけではなく、園児が「快」になる支援を心がけます。

参考資料: 原田碩三先生著「群れ遊びのすすめ」