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データから見た幼児教育の重要性 (2017年)

子供の教育に時間やお金をかけるとしたら何歳頃が良いか?

   このような疑問に対し殆どの教育経済学者は「子供の発達段階における人的資本のもっとも収益率の高いのは子供が小学校に入学する前の教育(幼児教育)」と述べています。人的資本とは人間が持つ知識や技能の総称で躾などの人格形成や体力、健康など学力以外の能力も含めての話だそうです(※1)。

   最近、国の政策として幼児教育の無償化が予算審議に際し頻繁に浮上していますが膨大な予算が必要な為、実現までのハードルは高く3~5歳児を無償化した場合、年間約8,000億円、5歳児だけでも年間約3,000億円は必要になるようです。何故、幼児教育に多額の予算を国として投入してまでも実施に向けて進めなければならないのでしょうか。 

国際的な動き

   世界的に見ても幼児教育の無償化や義務教育化が潮流になりつつあり、英国では既に5歳から義務教育化、フランスは3歳以上がほぼ全員無償の公立幼稚園に通っているそうです。韓国でも平成24年に就学前3年間を無償化する法律が制定されているそうです。 (※2)

アメリカ、 ペリー幼稚園での実験

   なぜ、就学前の子供の人的資本投資の収益率が高いのか? それを実証したペリー幼稚園プログラムの研究で紹介されております。

   以下はシカゴ大学のヘックマン教授を中心に行われている実験で、1960年から現在も追跡調査が行われているそうで、ミシガン州のペリー幼稚園での長い期間の追跡調査で判ってきた成果だそうです。実験内容は低所得のアフリカ系米国人の3~4歳の子供たちに「質の高い就学前教育」を提供することを目的に行われました。

   入園資格のある子供たちのうちランダムに選ばれた58人の入園を許可された子供(処置群)と65人の運悪く入園を許可されなかった子供(対照群)を比較するという実験で、その効果の測定が行われました。その結果が高く評価されたのは対象者に対してこの後約40年に亘る追跡調査が行われたからです。

ペリー幼稚園での追跡調査の結果

   ( )内は約40年後、対照群の子供たちに対する処置群の比率です。

   ・6歳時点でのIQ → 高い(2.6倍)                            ・19歳時点での高校卒業率 → 高い(1.3倍)

   ・27歳時点での持ち家率 → 高い(6.3倍)              ・40歳時点での所得 → 高い(1.5倍)

   ・40歳時点での5回以上の逮捕率 → 低い(0.6倍)

結論

   就学前教育への支出は雇用や生活保護の需給、逮捕率などにも影響することから単に教育を受けた本人のみならず社会全体にとっても良い影響をもたらすようです。現在、国が失業保険の給付や犯罪の抑止に多額の支出を行っていることを考えると幼児教育への財政支出は社会全体でみても非常に割の良い投資であると考えられます。

                                                                                                                                                                             上松 馨 記

   ※注1 「学力の経済学 」(株)ディスカバー・トゥエンティワン発行、中室牧子著  ※注2 産経新聞 H26.6.13